ゲット・アウト(2017)の考察
第90回アカデミー賞にて4部門ノミネート、脚本賞受賞に至ったげ「ゲット・アウト」
今回はこの映画の伏線について考察していきます。
伏線の考察
1.冒頭の誘拐シーン
時系列で言うとクリスがローズの家を訪れる半年前、クリスがローズと付き合っているのが5ヵ月なので付き合う直前のことです。この時誘拐された黒人はローガン・キングであり誘拐したのはローズの兄ジェレミーです。ジェレミーが誘拐の際用いた鉄仮面と白い車が映画の終盤で登場します。また、この白い車の鍵の持ち主はジェレミーでした。時系列から考えてクリスはローガンの次の犠牲者でしょう。
2.鹿と衝突するシーン
この鹿との衝突は母親のひき逃げを連想させるのは言うまでもありません。母親のことを気にかけないうちに時間が経ってしまった少年時代の記憶からクリスは警察に通報します。この時ローズが警察を呼ぶことを拒んだり、クリスの身分証明書の提示を拒むのはクリスの存在がばれるのを嫌ったからでしょう。
3.ジョージナとウォルター
アーミテージ家の使用人として働く二人の黒人です。彼らが不気味な存在として描かれる最初のシーンがクリスがたばこを求めて外に出るシーンです。このシーンでウォルターは夜なのに帽子を被って外で走っています。ジョージアはやたらと自分の髪(かつら)のことを気にしています。これはローズの祖父母の記憶を受け付ける手術を行った際の傷を見られないようにするためです。同様にパーティーに現れる黒人ローガンも傷を隠すために常に帽子を被っています。彼らへの意識の移植は必ずしも完全ではないため所々感情が不安定になるシーンが描かれます。手術が完全でない証拠としてローガンはクリスのカメラのフラッシュの影響で一時的に意識が戻ってしまいます。
ローガンがクリスの握手に黒人式で応じないのもローガンに白人の意識が移植されている伏線となってます。
4.ビンゴと人身売買
アーミテージ家でパーティーが行われる理由はクリスの品定めです。白人達がクリスの黒人としての骨格、遺伝子等についてやたらと気にして手で触れてるシーンがその伏線となっています。これは暗に黒人奴隷の歴史を示していると思います。黒人奴隷がどれほど働けるか、どのような才能を持っているかを白人達が吟味しているのです。そしてオークションの結果クリスを落札するのが盲目のジムです。彼がクリスの写真家としての才能を羨むシーンがこの伏線となっています。また、物語の冒頭でローズの祖父が黒人選手ジェシー・オーエンスに敗れたこともこのシーンの伏線となっています。
アーミテージ家
アーミテージ家は家族で黒人を誘拐してオークションにかけます。
ローズの父親ディーンは脳神経外科医であり黒人からの移植手術を担当します。
母親ミッシーはローズやジェレミーが連れてきた黒人の洗脳を担当します。彼女は黒人の喫煙に対してうまく言及することで上手く催眠術を行い、彼女が紅茶をかき混ぜる音とともに黒人の意識を落とします。
ジェレミーは誘拐兼父の手伝いを担当します。父を手伝うために医学の道を志したのでしょう。誘拐の方法は大胆で鉄仮面を被って力尽くで黒人を襲います。彼が柔術に長けてると食事中にクリスに話すシーンがあります。彼が誘拐した被害者の一人がローガンです。
そしてクリスの恋人を演じるローズは兄ジェレミーと同じく誘拐役です。ネットでスポーツや芸術などある分野において優れた黒人男性/女性を見つけるとその黒人と関係を持つことを演じ、ターゲットをアーミテージ家へと連れて行きます。彼女の誘拐の犠牲となったのがクリスです。またジョージアも犠牲者であるということがクリスが写真を見つけるシーンで判明します。
最後に
この映画はクリスが誘拐され洗脳されるというサイコスリラー、サスペンス要素を描きながらも白人が黒人を見る目、そして白人による黒人奴隷の売買を暗に意識させる映画であるように思います。
↓率直な感想はこちらに書いてます。
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