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ムーンライト(2016)の考察

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第89アカデミー賞にて作品賞に輝いた映画「ムーンライト」

「メッセージ」や「ラ・ラ・ランド」と言った名作を差し置いてなぜ本作が作品賞受賞に至ったのか考察してみました。

 

 

ストーリー

この映画は主人公であるシャロンの年齢に合わせて「リトル」「シャロン」「ブラック」の3パートに分けられます。

 

1.リトル

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主人公シャロンのあだ名はリトルでした。内気な少年リトルはいじめっ子から隠れているところをフアンに見つかります。

 

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フアンは麻薬が横行する街に1人でシャロンがいることを心配し家に連れて帰ります。フアンと彼のガールフレンドであるテレサとの食事を通し、最初は口を利かなかったものの徐々に口を開くようになります。

翌朝、フアンはシャロンを母親の元へと返します。ここでシャロンの母親ポーラが麻薬中毒者であることが明らかになります。

 

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母親からの虐待、周りの子供たちからの虐めから逃れるようにシャロンは頻繁にフアンの元へと通うようになります。シャロンにはフアンの他にもう一人だけ心を開ける人がいました。それはシャロンと同級生であり、シャロンのことを「ニガー」と呼ぶケヴィンです。

 

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ケヴィンとの関係や周囲から「おかま」と呼ばれることから、自覚はないもののシャロンは自分がゲイであることに気づき始めます。シャロンがこの同性愛の悩みを最初に打ち明けたのが他ならぬフアンでした。フアンはシャロンに自分の人生は自分で切り開かないといけないことをフアンに伝えました。この時、フアンはシャロンに「月の光に照らされた黒人は青く見える」と昔言われたエピソードを話します。

 

その後、フアンがシャロンの母親に麻薬を打っている売人だと知り、シャロンはフアンと距離を置くようになります。

 

2.シャロン

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時は過ぎ、シャロンは高校生になりました。内気な性格は相変わらずでケヴィンとの仲は保っているものの、「ゲイ」であることを理由にテレルとその連れに虐められる毎日を送っています。

 

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母ポーラはと言うと麻薬に染まりきっており、夜な夜な娼婦として働き、客を自宅に連れ込むようになっています。客を招く日はシャロンに今夜は別の場所に泊まるように言い、シャロンは逃げるようにテレサの元へと向かいます。フアンはシャロンが高校生になるまでに亡くなっていました。翌朝シャロンが家に戻るとポーラはシャロンに麻薬を買うためのお金を請求します。もはやシャロンはポーラへの愛を失っていました。

 

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ケヴィンのことを夢に見たシャロンはある夜ケヴィンの家を訪ねます。2人は近くのビーチでマリファナを吸います。酔った2人は月の青い光が照らす中、お互いのことを見つめ合いキスを交わします。

 

翌日、テレルはケヴィンにシャロンを殴るよう指示します。これに嫌々従ったケヴィンはシャロンのことを殴ります。シャロンが立てなくなったところをテレル達は一方的にけり続けます。

カウンセラーに事情を聞かれたシャロンでしたが、シャロンは誰にも自分の境遇は理解できないとカウンセラーとの相談に乗りません。怒りを抑えきれないシャロンは教室で無防備なテレルを椅子で殴り少年院に送られます。

3.ブラック

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時は流れシャロンはすっかり大人になっていました。シャロンは売人として生計を立てており、金歯や金のネックレス、金の腕時計に金のピアス、車を走らせる時は爆音を流すなど外見上に以前の内気な少年としての面影は残っていませんでした。遠くに引っ越し、母親との連絡は取らず、以前の自分を捨てたシャロンでしたがテレルへの怒りは残っており、テレルと似た人物に銃を向けるなどどうしても過去を捨てきれないでいました。

 

ある夜母親からの電話を取ることを決心したシャロンは電話を手に取ります。しかし、電話をかけてきたのは母ポーラではなく旧友ケヴィンでした。ケヴィンは今自分がシェフとして働いていて自分の店に来るようシャロンに伝えます。

ケヴィンとの電話の翌朝、シャロンは夢にケヴィンを見て自分が夢精していたことに気づきます。シャロンはケヴィンのこともポーラのこともテレルのことも忘れられないでいました。

 

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シャロンはケヴィンと出会う前に母ポーラが入院する薬物依存治療施設を訪ねました。ポーラはシャロンに売人をやめるよう話すも、シャロンもまたポーラに対しての溜まっていた思いを吐き出しました。

 

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シャロンはケヴィンが働く店を訪ねます。ケヴィンはシャロンに電話をかけた理由を彼に似た人物を見かけただからと話します。また、ケヴィンは別れた妻と子供がいて貧しいが自分は幸せだと話します。シャロンはケヴィンに、ケヴィン以外の男性と関係は持ったことがないと話します。その夜シャロンとケヴィンは和解し抱き合います。

 

少年時代のシャロンが月明かりの下、海で遊んでいる映像とともに映画も終わりを迎えます。

 

考察

 

青と黒

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作中でも「月の光に照らされた黒人は青く見える」と言うエピソードが紹介されます。純粋無垢な青と自分の心に逆らった黒、2つの色の対立構造こそがこの映画のストーリを考える上で核になっているように思います。

内気なシャロンは青であり、麻薬の売人としてのシャロンは黒です。少年院を経て黒く染まってしまったシャロンはケヴィンとの和解を通してまだ青かった頃の自分を見ます。黒と青どちらでいることが幸せかと考えれば、シャロンにとってはどちらを言っても辛い人生が待っていました。

 

LGBT、黒人を扱った作品として

 「ムーンライト」は主要キャストが全て黒人です。黒人以外の人種が登場したのはケヴィンの店くらいでしょうか。

近年のアカデミー賞候補作品を見ると、「シェイプ・オブ・ウォーター」「ボヘミアン・ラプソディ」「グリーン・ブック」「パラサイト 半地下の家族」「ブラッククランズマン」の様なLGBT、黒人、貧困層のような社会的に弱い立場にある人間を描いた作品が数多くあります。以前の白人至上主義から一変、社会が人種差別と声を挙げるようになりこのような映画を積極的に評価していく流れが映画界全体に観られるのだと思います。

 

最後に

「ムーンライト」がアカデミー賞作品賞受賞に至ったのには、美しい映像と共に苦しい生活を送る人々を詩的に描いたという理由もあると思いますが、その作風が時代に合っていたという点が大きいのではないかと思います。もしこの映画が30年前に製作されていたらどうだったでしょうか、あるいはそのような映画の製作に予算が回らないような世界だったかもしれませんね。

長々と書きましたが私は「メッセージ」や「ラ・ラ・ランド」の方が好きです。

 

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